「そういえば、この看板もあまり見かけなくなったなぁ」
ビスマルク髭をたくわえ、大礼服を着た仁丹のおじさんが、辺りの町名を知らせる琺瑯でできた町名看板。
昔は京都の町のあちこちにあったもんだが、家が建て替えられる度に町の辻々から消えて行ったのかもしれない。
この看板を見ていると、銀粒仁丹の苦いけどなんだかスーッとする清涼感のある味まで思い出す。
祖父が印籠のような入れものから数粒掌に出しては口の中に放り込んでいたっけな。
「お久しぶりです」
仁丹おじさんにそう言いながら写真をパチリと撮る。
どうやらここは上京区らしい。
