部品を取替えて直す:大正浪漫な半菊型電灯笠

「ぎゃー!」

とある季節の変わり目の休日、隣の部屋で布団を片付けていた相棒が野太い悲鳴をあげた。

なんだなんだと思って駆けつけると、ペンダントライトの笠を持った相棒が呆然と立っている。天井からぶら下がっていた電灯に布団がトンと当たったと思った途端、ランプシェードが突然落ちてきたらしい。

天井を見るとコードだけが情けない姿でゆらゆら揺れていた。

天井の引掛埋め込みローゼットからコードを取り外し、コードと電灯笠の切れ目をみてびっくり。

えんじ色の糸と黄色の糸で二重に包まれたコードは擦り切れてボロボロになっていて、ぷっつり切れたビニル被覆の内側から剥き出しの電線がにょろっと出ているではないか。

根本でコードが切れてしまったランプシェード
完全に切れてしまったコードの電線を中に押し込んでみるが、それで直るはずもなし。

なんでこんなことになったのだろうと思いながらランプシェードを分解し、笠からコードの切れ端を取り除いてみた。どうやら笠に接続されている金具の断面がギザギザになっていて、そこを通っていたコードが長年の間に少しずつこすれて弱くなり、布団が当たった拍子に切れてしまったようだ。

電灯笠は大正時代か昭和初期のほぼアンティークものだが、それ以外の電気系統はコードも部品も買った当時新品だった。でもこの金具部分がまさかこんなノコギリ状になっていたとは。

時々天井から取り外して埃をはらっていたのに全く気づかなかった。

コードを通す外ネジニップルの断面がノコギリの歯のようになっていた
コードを通す外ネジニップルの断面がノコギリの歯のようになっていた

これはもうどこかの電気屋さんでコードと金具を総とっかえしてもらうしかない。

そう思って早速近所の電気屋さんに尋ねたところ、あいにくこの手の修理はしていないという。ならばと思ってビンテージものの家具や電灯を扱っているお店に当たってみたが、他店で購入したものの修理は受付けていないと言われてしまった。

これを買ったのはもうかなり前で店の名前すら覚えていない。しかも、買って数年後に近所に行った時には店はもう無くなっていて、店を閉じてしまったのか、それとも別の場所で今も営業しているのかすらわからない。たとえどこかで営業していたとしても、こういう金具を使っていたと思うと修理を頼むのは少しためらってしまうし、さあ困った。

困った時はGoogle先生に聞いてみるに限る。ということで、パソコンに向かって市販のものでぴったりのものはないかと電気量販店のサイトやAmazonで売っているものを色々見てみる。

ところが、ペンダントライト用の器具はいっぱい売っているものの、どれもコードの片方に天井のローゼットにカチッととめる部品、もう片方に電球をはめ込むソケットがくっついているタイプばかり。このアンティークの電灯笠には使えそうにない。

「そのどちらかが簡単に取り外せて、コードにシェードを通したらまた元に戻せるようになっていたら良いのに。そういうのは売ってないのかなぁ」とぶつくさ言いながら検索ワードをあれこれ試してネットの波を漂う。

隙を見つけてはネットサーフィンすること数日。ある日「お! これはいけるんじゃないか?!」というものが見つかった。

愛知県瀬戸市にある栄興電器工業所という会社が販売している吊り下げコードだ。

電器工業所というだけあってこの会社のWebサイトをには照明器具やその部品がたくさん並んでいる。他所ではバルクでしか売っていないパーツも1つから買え、価格もとても良心的だ。

Webサイトには「このような商品は、弊社でしか購入できません」「お値段も直販売の為、格安」と小さく書いてあるが本当にその通りで、あきらめずにしつこくネットサーフィンしてよかったと小躍りした。

自分のしつこさに感謝しつつ、分解した電灯の部品をつぶさに研究して栄興電器工業所のWebサイトで販売している部品と照らし合わせ、必要そうなものをリストアップする。

陶器のソケットは全然傷んでいないのでそのまま使うことにして、うんうん唸りながら検討して結局これだけ注文することにした。

吊り下げコード2(茶色のねじりコード40cm長のもの)
外ネジニップル「PF1/8」(15mm長のもの)
ブッシング「座小」(外ネジニップルに通す電線の傷や断線を防ぐもの)
丸ナット(シェードを外ネジニップルに固定するもの)

届いたのがこちら。

吊り下げコード、外ネジニップル、丸ナット、ブッシング
吊り下げコード、外ネジニップル、丸ナット、ブッシング

さすが電器専門店の商品。当然といえば当然なのだが、ツイストコードの先っちょには圧着端子が付いていて被覆も綺麗に処理されているし、引っ掛けシーリングの内側には重いシェードの負荷がコードにかからないようコードストッパーが付いている。素晴らしい!

あとは分解した時に確認しておいた順番通りにそれぞれの部品とランプシェードをコードに通し、しっかり固定するだけ(のはず)だ。

コードに通す順番
この順番にコードに通して固定する

陶器ソケットは上下2つのパーツでできていて、上が電気コードを止める部分、下が電球をはめる部分だ。上部にはさらに外ネジニップルをはめる固定金具がついているのでそれも取り外して間違わないように順番通りに並べる。

並べ終わったら順にコードに通していく。

丸ナットは簡単に通ったが、ブッシング(コードを外ネジニップルのスレから守るもの)と外ネジニップルにツイストコードを入れるのがちと難しい。

ツイストを一旦解いて一本ずつじわじわ通すとなんとか通った。

ブッシングと外ネジニップルを通したツイストコード

お次はランプシェードだ。

ランプシェードは金属部分とガラス部分が簡単に外せ、ソケットは金属部分に固定するので、今は不要なガラス部分は外して作業する。

コードにランプシェード(金属部分)とソケットの固定金具を通す
コードにランプシェード(金属部分)とソケットの固定金具を通す

ランプシェードと固定金具は楽ちんに通せた。

次はこのツイストコードの先っちょに付いた端子を陶器のソケット上部に固定する。

ソケット上部の真ん中に空いている2つの穴に端子が付いたツイストコードの先を一つずつ通し、プレートについているネジを外して端子の丸穴にネジ足を通し、それをプレートに戻してネジ留め固定すれば完了だ。

それが終わったら、既に通してあった固定金具とソケット上部をネジで留め、固定金具付きのソケットとランプシェードを外ネジニップルで回し止める。(この部分は写真を撮り忘れてしまった。)

外ネジニップルの内側にプラスチックのブッシングを入れてコードに直接金具が当たらないように保護し、一番最初に通しておいた丸ネジで固定する。

ランプシェードの内側はこんな感じ。

ソケットの下部を元に戻してネジで固定し、ガラスのシェードも元に戻せば完成だ。

部品交換して完成したランプシェード
完成!

自分に直せるだろうか? と最初は不安だったが、専門店でぴったりの部品を見つけられたのでいくつかネジ留めするだけで修理完了。思ったより簡単に直せた。

しかも直す前の状態より遥かに安全になってとっても嬉しい。

多分、一番難しかったのはぴったりの部品を探すまでだったな。

部品にかかった金額  計936円
内訳:
・吊り下げコード  845円
外ネジニップル   53円
ブッシング     13円
丸ナット      25円

Sooim KIM 

面白い映画、演劇、ドラマを求めてあちこちをさまよいつつ、美味しいものを食べ、好奇心にまかせていろいろ作る。

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