御所にほと近い京の街を歩いていたら、こちらに頭を下げてくださる御婦人がいらっしゃった。
大きなドアと白い窓枠がレトロモダンで美しい美容室の店先で、丁寧に頭を下げてお客さんを出迎えていらっしゃる。
「いらっしゃいませ。毎度ありがとうございます。」
白衣を着て凛とした表情でそう挨拶されると「いえいえ、どうぞ頭をあげてくださいな」と返したくなる。
初めてこの看板を見た時、なんて素敵な看板を出す店なんだろうとオーナーのセンスに惚れてしまった。
店先だけでなく窓から見える店の中もクリーンでセンス良くまとまっていて、ヘアスタイリストにはちとうるさいわたしが「ここで髪を切ってもらったらきっと気に入るに違いない」と確信に近いものすら感じる。
だが、京都に帰省するときはいつも慌ただしくて、この美容室の前をちょくちょく通りかかるのにまだ一度も中に入ったことがない。
「次回帰ってきた時にはきっとお願いしますね」
腰の低い御婦人にそっとそう告げて、目的地への道を急ぐのであった。
