JR神戸線の元町駅で降り、線路の北側をちょいと東に行けば、そこに豚肉専門店の新生公司がある。
数軒手前からそれとわかる美味しそうなタレの匂いに誘われ店の前まで。
すると軒先にぶら下げられた艶々と飴色に光る焼き豚が目に入る。
大きなフックに引っ掛けられた大きな塊の焼き豚。それがここの名物だ。
その光景に香港を思い出し、思わず笑顔がこぼれる。
見上げると、店の上方に二種類の看板がかかっている。
「多分こっちが古い方かな?」と見当をつけた縦書きの看板のセンスの良さに、「ここで買えば間違いない」となぜか確信してしまった。
ほっそりした黒線で豚の横姿が描かれていて、その下に赤い文字で「豚肉専門店 新生公司」とある。
「ここは豚のことを知り尽くしているに違いない」
そういう雰囲気が漂う看板なのだ。
案の定、買って帰った焼き豚はタレの甘辛味もちょうどよく、肉汁が滴り落ちるほどジューシーだ。
あまりにも美味しくてよく冷えたビール片手にペロリと平らげてしまい、「もっと大きいのを買えばよかった」と後悔した。
この4連休、あまりのジメジメとした蒸し暑さに、「あそこの焼き豚とビールで一杯やりたいなー」と何度も思い出す。
政府は「GO TO トラベル」とキャンペーンを打つものの、今はとてもじゃないが旅行に行く気になどならない。
でも、いつか状況が落ち着いたら神戸元町まで行って、ここで焼き豚を買おうと思っている。ぶら下がっている中でも一等大きい塊を。
そして冷えたビールで一杯やるのだ。
