金継ぎで直す:有田焼の飯碗に再チャレンジ

新型コロナウイルスの流行で家に籠ることが多くなってからというもの、昔ちょっとやってみた「金継ぎ」に再びチャレンジしたくなった。

ご存知の通り、金継ぎは割れたり欠けたりヒビの入った陶磁器を漆でくっつけ、接合部分を金や銀などの金属粉で装飾する工芸的な修繕方法だ。

ウルシの木からとった樹液である漆は、肌につくとかぶれてしまうため取り扱いには注意が必要という少々厄介なシロモノだ。尚且つ、一定の湿度がないと乾かないという不思議な性質をしているせいで、乾かすときには特別な環境が必要という少々面倒なシロモノでもある。だが、一旦乾いて硬化すると触っても安全、酸にもアルカリにも強く、防湿性・防腐性も出るというとても優れた天然の接着剤・塗料。そのため昔から安全な接着剤・塗料として食器にもよく使われている。

その、本漆を使った金継ぎにわたしが最初に手を出したのはかれこれ10年前のこと。

お気に入りだった器を割ってしまい、なんとか安全なくっつけ方で直せないかと模索していた時にたどり着いたのが金継ぎだった。

「漆にかぶれたら嫌だなー」という恐れからしばらく逡巡していたのだが、なんでも自分でやってみたいわたしは東急ハンズで初心者用の金継ぎセットを見つけた途端、「ま、かぶれてもなんとかなるさ」と試しに買ってチャレンジすることにしたのだ。

セットの中に入っていた指南書だけを頼りに、試行錯誤しながらおよそ2ヶ月かけて2つの器の金継ぎを完成させたのが10年前。

その時直したのは割れてしまった急須の蓋と大きく欠けた有田焼の飯碗だった。

手袋のおかげで漆にかぶれることもなく、どちらも初めてにしては仕上がりもまずまずで悦に入っていたもんだ。

ところが、である。

その時直した急須の蓋は、数ヶ月も使わないうちに直した箇所からポロリととれて元の割れた姿に戻ってしまった。

有田焼の飯碗のほうは、客人にうっかり電子レンジにかけられるという目に遭い、綺麗に光っていたゴールドの輝きは鈍い黄土色に変色してしまい、しばらくすると埋めた部分が見事にポロリと取れてしまった。

「あー、こりゃどちらももう一度最初からやり直しだなー」

そう思っているうちに歳月は流れ、「こんど金継ぎで直そう」と食器棚の隅に追いやられた割れたり欠けたりした器は少しずつ増えていき、新型コロナウイルスの流行がやってきたのである。

金継ぎは工程ごとに数日から数週間待って乾かすという時間が必要で、気候に左右されるその待ち時間が少々辛気臭い。

だが、ちょこちょこ進められるので、家に籠もっている間にするにはもってこいの作業でもある。

よーし、貯めておいた割れた皿や欠けた器を今のうちに一気に全部直してやれ!

ということで、早速ねじり鉢巻でコンピュータの前に座って金継ぎのノウハウを調べにかかる。

昔とは違って今やHow Toを細かく説明しているウェブサイトやチュートリアル動画がいっぱいあって大助かりだ。なかでも特に素晴らしかったのが「金継ぎ図書館 鳩屋」というウェブサイト

ここでは本漆を使った本格的な金継ぎ方法だけでなく、軽いノリで直せる接着剤と合成漆を使った直し方やその折衷版の直し方、それぞれの特徴と違いまで詳しく説明されている。金継ぎに必要な材料や道具の説明から入手先、詳細なHow Toや動画も惜しげなく掲載されている。折々に登場するちょいと生意気な鳩のツッコミも面白く、動画に登場する覆面レスラーもイカしているのですっかり夢中になってしまった。

この「鳩屋」のウェブサイトでしっかり勉強しつつ、早速材料と道具を整える。

そしてまずは無実の罪で「電子レンジの刑」に処せられた可哀想な有田焼の飯碗と、お気に入りの茶碗の欠けを直すことにした。

どちらも欠けた部分に下処理をし、その後で小麦粉と生漆と木粉を練って作ったパテで欠けを埋める。

欠けが結構深いので、2回に分けて埋めては乾かすを繰り返す。

その所要時間1ヶ月。

ようやくパテで欠けた部分が埋まったら、今度は表面を綺麗に削り、表面が滑らかになるようにその上から生漆と砥粉で作ったペーストを塗る。それを数日かけて乾かし、表面を綺麗に研ぐのである。

納得がいくまでこれを繰り返す。そしてようやく漆の下塗りだ。

漆を塗っては乾かし、表面を研いではまた漆を塗り、綺麗な表面になったところで最後の漆塗りと金属粉での仕上げになるというわけだ。

鳩のツッコミに耳を傾け、覆面レスラーに励まされつつ少しずつ作業を進めていったのだが、はっきり言って前回ここまで丁寧にやった覚えはない。

10年前に直した金継ぎがいかに雑だったかを思い知った。

おまけに初心者というものは大胆なもので、当時セットに入っていた貴重で高価な金粉をあまり気にもせずに惜しげなく使って仕上げた。だが今回はたまたま金の価格が史上最高価格を記録したというニュースが出たばかりで、とてもじゃないが金粉を買って仕上げる気にならない。(なんせいつなんどきまた誰かに「電子レンジの刑」に処せられるかわかったもんじゃない。)

少々知恵のついたわたしは、今回はお手軽で食器にも安全な錫粉で仕上げることにした。

金継ぎならぬ錫継ぎである。

だが仕上がりはかなり満足がいくものだった。

有田焼の飯碗のほうはちょっぴりゴールドがかった錫の鈍い光沢が器の肌の色にもよく合って美しい。

漆の塗り方が雑だったのか、それとも研ぎ方が甘かったのか、よく見ると線があるが、これもまた良し!

茶碗のほうはというと、錫は磨くこともできるというのでちょいと磨いてみた。

こちらも境目があまり綺麗じゃなく段差が線になっているが、上等上等。

錫ってひょっとして金より良いんじゃないか?

なーんて思いながら、お次はもっと複雑なやつを直してやるぞと心に誓ったのであった。

Information

ちょいと生意気な鳩とイカした覆面レスラーに会える金継ぎ情報たっぷりのウェブサイト
金継ぎ図書館 鳩屋

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Sooim KIM 

面白い映画、演劇、ドラマを求めてあちこちをさまよいつつ、美味しいものを食べ、好奇心にまかせていろいろ作る。

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