IKEA Hack: イケアのBESTÅをカスタマイズ

この春に東京からNYに引っ越ししたとき、ほぼ入れ違いにNYを去ることになった友人から大画面TVを譲ってもらった。

東京で暮らしていた数年はテレビのない生活を送っていたので、自分んちのリビングにテレビがあるのはなんだか不思議な気がする。でもそんな不思議な気持ちもほんの束の間で、あっという間にテレビのある生活に慣れてしまった。

ソファにどっかり腰を下ろし、リモコン片手にお気に入りのテレビ番組を大画面TVで見るって楽しいなぁ〜!

ところがテレビの位置がどうも具合が悪い。うちのソファはラウンジタイプと呼ばれる低めのソファなので、首凝り気味の私にはもうちょい低い位置にテレビがあるほうが楽ちんだ。

友人はTVと一緒にTV台も譲ってくれたのでそれに乗せていたのだが、あいにくこのTV台が少し高めだったのだ。奥行きもゆとりあるタイプだったため、動線上しょっちゅう行ったり来たりするTV前は10cmでも広いほうがいい。散々悩んだ結果、残念だがこちらは引き取りに来てくれるリサイクル店に寄付することにして、スペースにあった高さと奥行きのTV台をIKEAハックすることにした。

ご存じない方のために書いておくと、IKEAハックというのはIKEAのアイテムを自分の好きなようにカスタマイズすることだ。「たたき切る」とか「開墾する」とか「うまくやり抜ける」いう意味もある「hack」と言うだけのことはあり、元の商品からは想像もつかなかいくらい劇的なカスタマイズをする人もいれば、ほんのちょっとだけ手を入れてIKEAっぽい雰囲気を変えてしまうというミニマムなカスタマイズをする人まで色々ある。

今回の私のIKEAハックはどちらかといえばミニマムなカスタマイズ。IKEAでも人気の定番シリーズ、BESTÅ(ベストー)に他所で買った脚をつけ、改造したIKEAのドアをつけるという計画だ。

使ったBESTÅのベースはこちら。

IKEA Besta TV unit White
出典:IKEA

アメリカだとTV unit、日本ではTV台という商品名で売られている、天板と背面にケーブルを通せる穴がついた箱型キャビネット。高さは38cmのものと64cmのものがあるが、低いものが欲しかったので迷わず38cmのものを選んだ。これに低めの脚をつけてちょうど良い高さにすれば良い。

ころんと丸い木製のボール脚

ということで、まずは脚を選ぶ。いや、実はもう目をつけていた脚があった。

私にはそのセンスに惚れ込んで長年追っかけているインテリアデザイナーが数人いるのだが、そのうちの一人がサラ・シャーマン・サミュエルSarah Sherman Samuel)さんだ。3年くらい前に彼女が自宅のメディアキャビネットとしてIKEAのベストーをカスタマイズしていて、その時、木でできたころんと丸いボールを脚として使っていた。それがとても素敵で「いつかこの脚を真似したいなぁ」と思っていたのだ。

なので今回のIKEAハックは絶好のチャンス。ベストーに木製のボール脚は最初から決まったも同然だった。

ただ問題は、どうやって木のボールを脚にするか、だ。というのも、サラさんは専用金具を使ってベストー本体を壁にしっかり固定していたので、木製ボールはベストーと床の間に挟むだけで仕上げ、言わば補助脚として使っていたからだ。

でも、賃貸住宅住まいの私としては壁に専用固定金具をつけてベストーを壁掛けするのは少々厄介だ。壁にドリルで穴を開けるより、ベストー自体に脚をしっかり付けて床置きしたい。

そもそもIKEAのベストーは脚をつけられるようになっているんだし、脚を取り付ける位置にネジ穴金具も埋め込まれているんだし、別売りの脚だって何種類も用意されている。だからベストーに使える金具がくっついたころんと丸い木製のボール脚がどこか他所で売られていたらあっという間に問題解決する。

そう思っていつものGoogle先生に尋ねてみると、なんのことはない、案外簡単に見つかったではないか!

IKEAの定番家具用の脚や取っ手を専門に作っているスウェーデンのメーカー、Prettypegs がまさにドンピシャの脚を売っていたのだ。

それがこちら、Otto 100 という高さ10cmのボール脚。

サラさんが使っていた木のボールはもっと大きかったが、うちの低めのソファには高さ10cm(つまり直径10cm)のボール脚のほうがちょうど良い。

Prettypegsは世界中のほぼ全ての国に配送してくれるというので、早速これの Ash Natural を注文して4つ取り寄せた。

数日後にFedExで届いた脚がこちら。

Prettypegsから届いた脚と金具
Prettypegsから届いた脚と金具

注文する時にオプション指定を間違ったので不要な金具も届いたが、将来別の家具に脚をつける時に使えるだろうしこれは大切に取っておく。

木のボール脚は表面がすべすべ。早く取りつけたい気持ちを抑えてまずはどんな感じになるか見るためにベストーの上に一つ乗っけてみる。

試しに脚を一つ乗せてみたところ

なかなか良い。

よーし、早速この脚を本体につけてみよう! 

まずは4つの脚の中に埋め込まれているネジ穴に付属のボルトをくるくる入れて取り付ける。

付属のボルトをねじ込んだ脚

次は相棒に手伝ってもらってベストーをひっくり返し、ベストーの底四隅にある脚つけ用ネジ穴にボルトを付けた脚をくるくるネジ入れる。

脚と一緒に送られてきたプラスチック製の黒いワッシャーも間に挟んでおく。

このTV台は幅が180cmと広いので、四隅だけ脚をつけると上に置くTVや中に入れるAV機器などの重さで中央が沈んでくる。なので中央にも脚が必要だ。

もちろん中央にもこの丸いボール脚をつけても良いのだが、そこはケチってIKEAのサポートレッグをつけることにした。IKEAのサポートレッグはOtto 100と同じく高さ10cmだし、高さの微調整ができるのも嬉しい。

ボール脚とサポートレッグをつけたところ
四隅にボール脚、中央2箇所にサポートレッグ

四隅にボール脚、中央2箇所にサポートレッグをつけ終わったらベストーをひっくり返し、床の凸凹に合わせて脚の高さを調整する。それで脚付け完了だ。

脚付け完了したIKEAのBesta TV台
PrettypegsのOtto 100を付け終わったIKEAのBesta

リモコン信号が通る内側が見えないドア

これで完成でももちろん良いのだが、この中に入れたものがどんなにごちゃごちゃしていてもパタンと閉じれば全て隠せるドアほど便利なものはない。

なので「ドアはいらんのちゃう?」と言う相棒の意見は即座に却下して、ドアをつける。

IKEAはBESTÅ(ベストー)用にドア/引き出しフロントパネルを何種類も出していて、他のメーカーもベストー用のお洒落なドア/引き出しフロントパネルをデザイン、販売している。なので世の中にはベストー用のドアがかなりある。

でも私が欲しいのはベストーの中に入れたDVD/Blu-rayディスクプレイヤーやオーディオ機器のリモコン信号は通すけど、中に入っているものは見せないドアだった。

イメージとしては昔日本家屋の夏用建具としてよく使われていた、簾(すだれ)をはめ込んだような隙間がある簾戸のようなものだったのだが、さすがにそういうものは販売されておらず、一番近いのはこの手の編んだ藤をはめ込んだタイプ。

これも悪くないのだが、なるべくすっきりしたクリーンなルックスに仕上げたいと思っていたので、できればドア全体の素材は同じほうが良い。しかもこのドア、編んだ藤をはめ込むのに職人の技が生かされているためか、結構なお値段がする。

さてどうしよう。

とこのドアを見ながら悩んでいるうちに、良いことを思いついた。真ん中をくり抜いたドアをざっくり織られた布ですっぽり包んでしまえば良いのだ!

布は編んだ藤よりも断然扱いやすいし、幸い数年前に日暮里の繊維街で買ったざっくり織りの麻の生地がまだある。もしあの生地がリモコン信号を通したら、IKEAのドアの真ん中をくり抜いてあの布を綺麗に貼り付けよう!

麻の布のクローズアップ
日暮里の繊維街で買ったざっくり織りの麻布

そうと決まれば早速実験。

ベストーの中に置いたDVDプレイヤーに適当なDVDディスクを入れ、引っ張り出してきた麻の布をかぶせる。
ソファに座り、リモコンで電源をON/OFFしたり、DVDを再生/一時停止したり、早送りしたりと各種操作をしてみる。

何の問題もなくリモコンが使えるじゃないか! やったー!
念には念を入れて布を二重にしたが、これも問題なしだった。

これでプランが確定したのであとは中をくり抜きやすいIKEAのドアを選べば良いだけだ。

IKEAのドアをハックする

まずはオンラインで目星をつけ、IKEAの店舗に行って展示されているサンプルを確認し、値段と構造をもとにハックするドアを吟味する。

最終的に選んだのは四辺は厚みがあり中央が薄くなっているタイプで、いわゆる「シェーカースタイル」の HANVIKEN だ。

素材も木の板ではなくパルプ集成材なので、内側の薄い部分はユーティリティナイフで切れるはず。これを3枚とドア用ヒンジを3組買い、家に帰って早速試しに1枚くり抜いてみることにした。

パッケージを開けてドアをよく見ると、裏と表で四辺の枠幅が違う。表は枠幅が上下左右同じなのに、裏は上下だけ枠幅が広くなっているのだ。

つまり、左右両脇は表裏のどちらからでもナイフを走らせることができるが、上下は表からしかナイフが入らない。「まあ、なんとかなるさ」と道具箱から刃折式ユーティリティナイフを取り出し、四辺の厚い部分と中央の薄い部分の境目に刃を入れてカットしていく。

やっぱり表裏ひっくり返しながらナイフを入れられる左右のラインは比較的あっさり貫通したが、表からしかナイフを入れられない上下のラインは少々力仕事になった。

肘の古傷を傷めないよう注意しながら何度も何度もカッターナイフを走らせていると、刃先が挟まって刃が折れそうになる。「やばい、やばい」と一瞬冷や汗をかきながら慌てて保護用のメガネをつけ(保護メガネは最初から付けておくべし!)、さらに何度も何度もナイフを走らせる。

そうしているうちにほとんど貫通したので、「こんにゃろ!」と裏から金槌で叩いて真ん中を力技で外す。

あまり綺麗に外れなかったが、枠にくっついてしまった端っこ部分はもう一度カッターナイフでスッとカットしたらすぐに取れてあっというまにこの通り。

中央部分を取り外したHANVIKENドア

やり方はこれで良いとわかったので、残りの2枚も同様に中央部分を取り外した。

中央部分を取り外したHANVIKENのドア3枚
左上のドアは右下枠が少し外れてしまったが、このあと糊付けして修正した

くり抜いたドアに布を貼る

お次は麻布を貼り付ける準備だ。

最初はクラフト用のステープラーで留めつけるつもりだったのだが、「そういやうちにはステープラー無かったんだった」と思い出し、糊付けで仕上げることにした。どうせ集成材には針が通りにくいし、糊付けのほうが綺麗に仕上がるはず。

布をつるつるした表面の集成材に糊でくっつけるというのは実は無謀で外れやすいんじゃないかと一瞬不安になったが、全体的に糊付けした後で見えない部分だけグルーガンで補強すればしっかりくっつくだろう。

それでもなるべく布がしっかり貼り付くよう、念には念を入れて粗めの紙やすりで表面全体に傷をつけておく。(細かい粉が出るので保護用メガネとマスクを忘れないで着用するべし。)

表面に傷をつける前と後比較
表面に傷をつける前(左下)と後(右上)

ドア3枚、全ての表面を傷だらけにしたら今度は麻布の準備だ。

ドアを開けた時に裏側がぐちゃぐちゃなのは嫌なので、内側の枠部分まですっぽり包むつもりだ。なので布は余裕を持たせてカットする。

この時、糸目に沿ってできるだけ真っ直ぐ裁断しておくと後で作業がしやすい。ざっくり織の布は糸を1本追いかけるのも簡単だ。

カットした布にアイロンを当て、全体の皺がなくなったら今度はドアに貼り付ける時の目安になる折り目を入れる。目安線なので、四辺全部をドアのサイズに折る必要ない。正面から見た時にドアの端になる部分の長いほうの辺1本と、短い方の辺1本(下の写真の青線部分にあたる部分)に折り目をつけておく。

さて、ここまで準備ができたらいよいよ糊付けだ。ここからは綺麗に貼るコツがものをいう。布目がねじれず、真ん中に張りを持たせて貼りつけるためには段階を踏んで糊付けしたほうが良い。

最初に糊付けするのは一番綺麗に仕上げたい表面から。それもドアを

1 下枠
2 左右の枠
3 上枠

の3つのセクションにわけて、順番に糊をのばして布を貼り付けていく。

ドア枠をセクションに分けて色付けし、順番を入れた画像
ドアの表を下(1)、左右(2)、上(3)に分けて順番に糊付けしていく

今回使った糊はデコパージュ用水性糊のMod Podge、マットタイプだ。

本当はもっと接着力の強い木工用ボンドを使うつもりだったのだが、うちにあったのは乾いても透明にならないベージュ色のものだったので辞めにして、乾くと透明になるMod Podgeを使った。

でも乾くまでに少し時間が必要なタイプで(微調整できるので)、尚且つ乾くと透明になるタイプの接着力強めの糊ならどれでも良いと思う。

Mod Podgeマット仕上げ、118mlボトルの画像

作業台の上にドアを表上に置き、ドアの下枠部分に糊を均等にのばしたら、折り目をつけておいた布のコーナー部分をドアのコーナーに合わせ、ドア枠の端っこと布の折り目も合わせて布をピンと張りながら貼り付ける。

歪んでる部分や皺が出てしまったらすぐに直し、ピンと貼る。

下枠部分が貼れたら左右部分を同様に貼り、中央部分がたるまないようにしっかりハリを持たせる。

それができたら上枠部分を貼って表は完成だ。

ドア枠の表に布を糊付けし終わったところの画像
アイロンで折り目を入れた部分(画像手前と右)がドアの端っこにピッタリ合うと気持ちが良い

お次はドアの側面と裏面を貼るのだが、なるべくすっきり綺麗に仕上げるためには余分な布をカットする必要がある。あれこれ試行錯誤して結局落ち着いたのがこのカット方法。

ドアの裏側、左下コーナーの布のカットの仕方図
ドアの裏側、左下コーナーの図

ドアの裏側から見て左下コーナーの例だが、赤線部分にハサミで切れ込みを入れ、コーナーは四角く切り落とし、一部、ペロンとしたドアの厚み幅の布だけ切り落とさずに残しておく。

四隅全部にハサミを入れたら、まず左右の枠(縦の枠)から糊付けする。

ドア左下コーナー、まず左枠に布を糊付けし、内側の厚み部分をグルーガンで固定する
ドア左下コーナー

側面(厚み部分)と表面に布を付け終わったら、余った布はくり抜き部分の内側に折り込んでグルーガンで固定する。

次にぺろんと残しておいたドアの厚み分の布を折って糊付けする。

残るは上下の布だけ。

コーナーが綺麗になるようにここは折り曲げることにしたので、折り曲げ分を残して斜めにカットする。そして糊付けだ。

余った布は内側をくり抜いた部分に折り曲げて、グルーガンで留めれば布貼りの完了だ。

布を貼り終わったドアがこちら。

布を貼り終わったドア2枚の画像

ドアに金具を付ける

お次はドアに金具をつける。

BESTA用のドア金具
BESTA用のドア金具

ドアを布ですっぽり包んでしまったので、金具をつけるための穴も見えなくなっているが、迷わず穴の部分に鋏を入れてチョキチョキ丸く切り抜いてしまう。

ネジ穴部分も布で覆われているので、ドライバーやキリなどを使ってしっかり穴を開けておく。そうしておけば金具をはめ込んだ時にネジ穴が合っていることが目視できるのだ。

ドアに金具をネジ留めできたら、そのドアをベストー本体に取り付けてTV台の完成だ。

IKEAハックの完成

出来上がったのがこちら。

IKEAハックが完成したIKEA Besta TV台
IKEAハックが完成したベストー

ドア裏も綺麗に仕上がり、ドアを開けた時に見苦しくなくて大満足。

ドアの裏側の画像
ドアの裏も綺麗な仕上がり

TVを乗せてみたら高さもちょうど良く、奥行きが浅くなったので動線を邪魔せず通行もしやすくなった。

IKEAハックが完成したベストーのTV台

あとはドアの取っ手だ。

スッキリしたデザインにしたかったので当初は付けるつもりはなかったが、なにぶん表面が布。よく触るところがそのうち黒ずんで汚れてくるだろう。汚れは簡単には落とせないだろうし、多分取っ手をつけたほうが良い気がする。

ということで、現在はいろんなドアの取っ手をあれこれ見ては「これはちょっと大きいな」とか「これは少し可愛すぎる」等、あーでもない、こーでもないとウインドウショッピング中だ。

これぞというものを探す、この過程もまた楽しいのである。

Information

IKEA ハックのために買ったもの

BESTÅ TV Unit  $100.00 x 1
BESTÅ Support Leg  $10.00 x 2
Prettypegs Otto 100 Ash Natural  $17.00x 4 + Shipping Fee $16.00
HANVIKEN  $22.00 x 3
BESTÅ Soft closing/push-open hinge  $15.00 x 3
Total $315.00

*麻の布と糊は家にあったものを使用

Sooim KIM 

面白い映画、演劇、ドラマを求めてあちこちをさまよいつつ、美味しいものを食べ、好奇心にまかせていろいろ作る。

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