これまでのおはなし
・序章
「ソファ用のクッションカバーなんて、マチ付き、ジッパー付きの布製ポーチをドでかくしただけ」
そうは言ったものの、この布製ポーチは巨人用のデカさになる。となると布もたっぷり必要だ。
なんせ、セミシングルのマットレスがすっぽり入る巨大ポーチ1つと、幅1mほどの台形型クッション用巨大ポーチ2つ分。
ざっと試算すると、120cm幅の生地が7メートル近く要る。うっかり高価な生地を選ぶととんでもない金額になってしまうだろう。
もともと、無印で売られている既成品カバーは、フラットな平織り綿生地のもので9990円、縦糸と横糸で素材を変えたニュアンスのある変り生地のもので19900円だ。
それを基準にすると、もし合計2万円くらいでカバーを作れればこの計画は大成功と考えても良い。
そうなると、一番材料費がかかる生地の予算は2800円/mが目安となるのだが、果たしてこの金額で欲しい生地が買えるのだろうか?
実は、わたしにはすでに「できればあれでカバーを作りたい」と狙っていた生地があった。
椅子貼り生地の定番として知られているRibacoのNCシリーズだ。
この生地は、ミッドセンチュリーモダンな家具や北欧ヴィンテージ家具を扱うお店がソファや椅子の張り替え用としてよく使っている。
カラーバリエーションが豊富で、素材はアクリル70%・ウール30%。
化学繊維と天然素材を組み合わせてそれぞれの良いとこ取りをし、耐久性・発色・風合いの良さを実現した生地だ。
数年前、我が家にあるヴィンテージのイームズシェルチェア用にたまたま買い求めたシートクッションが、偶然にもこのRibacoのNCシリーズの生地で作られていた。
これがとても良いのだ。
椅子の形にぴったり合うだけでなく、冬に暖かいのはもちろん、蒸し暑い真夏でも意外にさらっと心地よく使えるのでとても気に入っている。

発色がよく、丈夫で、織目にニュアンスがあり、手触りもよく、冬は暖かく、夏はさらっと座れる生地。もしこれで無印のソファベッド用カバーを作れたら、きっとミッドセンチュリーモダンなテイストに仕上がって、ボーエ・モーエンセン度が上がるはず。
そう思いながらリバコのウェブサイトを訪れてみたら、この生地は4200円/mもすることがわかった。大幅な予算オーバーだし、そもそもこの生地を小売りしてもらえるのかもわからない。
さて困った。
だがそこでめげてはいけない。そんな時にこそ頼りになるのがGoogle先生なのだ。
パソコンの前に座ってGoogle先生に質問してみると、すぐさま「isunohariji.com」という椅子の張り地を簡単に検索・購入できる専門サイトが検索結果の上位に現れた。
ウェブサイトを訪れると、取り扱いメーカーリストにはしっかりと「Ribaco」のロゴも並んでいる。
しかも、4200円/mのNCシリーズがなんと35%オフの2730円/mで買えるではないか!
サンプルも5点まで無料で送ってもらえるとあり、至れり尽くせりだ。
偶然「全品3割引セール実施中!」のお菓子屋に迷い込んだ子どもが「5つまでなら味見して良いよ」と言われたのと同じ状態になったわたしは、どれにしようかと嬉しい悲鳴をあげながら、なんとか候補を5つに絞り込んだ。
もともと、どんな色にもよく合い、小物の色で気分も変えられる明るめのグレーが良いなと思っていたのだが、部屋がパッと明るくなる黄色も捨てがたい。
どうせなら、マットレスと背もたれクッションの色を変えて、ツートンにしても良い。
あーでもない、こーでもないとうんうん唸りながら選んだのは、この5色。

グレーは黒に近いものから淡いものまでを3色。
黄色は彩度を抑えたものと鮮やかなものを2色。
注文して数日で手元に届いた大判のサンプルを封筒から取り出し、カバー代わりにシーツを被せておいたソファベッドの上に並べる。
どれも良い。
やっぱり初志貫徹で明るいグレーにするか?
それとも大胆に鮮やかな黄色にするか?
あるいはグレーと黄色のツートンにするか?
日中はお日様の光、夜は電灯の明かりで色をチェックしつつ、数日間横目でちらちら眺めながら、1つ、そして1つと候補から外し、選択肢を絞っていく。
最終的に選んだのは、座面に一番明るいグレー、背もたれに一番濃いグレーのツートンだった。
これでようやく生地と色が確定した。
次はこの布幅だとどれくらいの布が必要になるか、正確な計算が必要になる。
巻尺を取り出して、マットレスとクッションを何度も計測し、なるべくシンプルで美しく仕上がる作り方も合わせて検討する。
122cmという布幅の生地をどのようにカットすれば無駄がないか、ノートに絵を描きながらシミレーションもする。
そうやって、必要な生地の量は合計6.6メートルと確定。
お値段はざっと税込み19,820円で、予算内におさまる。
大満足だ。
最後にもう一度ダブルチェックして、発注を済ませる。
これであとは生地が届くのを待つだけで、お次はいよいよ巨大ポーチを実際に縫う段階に突入だ!
「カバーを縫う」につづく