前回拭き漆で直したお箸がとても綺麗に出来上がったので、今度は塗りがはげてきたお椀を同じく拭き漆で直してみることにした。

東京に引っ越すときに京都の実家にあったものを持ってきたので、少なくとも20年は使っているはずだ。とてもカジュアルに扱っていたせいか、お椀の中も外も傷だらけ。ところどころすり減って色も薄くなっている。


「塗りの器は水につけっぱなしにしちゃダメ」と母親に何度も言われて育ったにもかかわらず、疲れた日には「お母さんここにいないしまあいいや」と食事の後片付けを翌日に持ち越して布団に潜り込んでいたので、こういう状態になったのも当たり前と言えば当たり前だろう。
塗りのハゲやひび割れをじっくり見ながら「ごめんよ」と今更ながら謝りつつ、早速サンドペーパーで全体をやすりはじめる。
お箸の時は表面積が少なかったせいかそんなに大変じゃなかったが、お椀にサンドペーパーをかけるのは結構大変で難しいことをすぐに思い知った。
外側はすでにハゲハゲだったので割とすぐに木肌が見えはじめたが、内側は漆があまり剥げていなかった上にカーブが凹形なのでサンドペーパーをかけにくい。
しっかり食いついた漆を木地からやすり落とそうと手を動かしているうちに腕がだるくなってしまった。それでも腕を揉みつつ作業を続ける。


なんとか剥き出しの木肌が見える状態にできたので、今度は細目のサンドペーパーをかけて表面をすべすべにする。

「こんなもんだろう」と思える状態にするまでに3日もかかってしまったが(なんせ腕が疲れるから休み休みにしかできない)、ここまでくればもうこっちのもの。いよいよ漆塗りにとりかかる。
まずはテレピン油で希釈した生漆をむき出しになった木肌に染み込ませ、木地を硬く丈夫にする「木地固め」からだ。
漆に同量のテレピン油を混ぜ、それを百均で買った豚毛のブラシに含ませてガシガシ塗っていく。内側も外側も一気にガシガシ。
塗り終わったら表面に残った余分な希釈漆を古布で綺麗に拭き取る。
拭き漆をしていると他に使い道のなかった古いTシャツを使えるのもありがたい。

拭き終わったお椀は段ボール箱の中に入れて1日放置。
翌日からいよいよ「拭き漆」にとりかかる。
木地固めは希釈した漆を使ったが、今度は生漆を薄めずそのまま塗って古布で拭き取る。そしてまた段ボール箱の中に戻して1〜2日放置する。
これを何度も繰り返すのだが、2回目以降はまず細かめのサンドペーパー(#1000を使った)で表面を軽く撫でて整えてから生漆を塗る。そして余分な生漆を布で綺麗に拭き取り、また段ボール箱の中で1〜2日放置して乾かす。

5、6回繰り返した頃には表面に艶が出てくる。

念には念を入れてさらに数回拭き漆の作業を繰り返し、ツヤツヤになったところで最後に3週間放置して完成だ。



これでもうあと20年くらい使えるようになったはず。