「ストウブで捏ねないパンを作ろう!」とその続編のPart 2 は、NYにあるサリバン・ストリート・ベーカリー (Sullivan Street Bakery)のジム・レイヒー(Jim Lahey)さんのレシピに挑戦したつくレポだが、今回のPart 3 は選手交代。別のレシピに別の挑戦者がチャレンジする。
今回のレシピは、1日5分の手間をかけるだけでアルチザンブレッド(=本格的なパン)が焼けるという、ジェフ・ハーツバーグ(Jeff Hertzberg)さんとゾーイ・フランソワ(Zoë François)さんのレシピだ。
二人の共著、The New Artisan Bread in Five Minutes a Day: The Discovery That Revolutionizes Home Baking はニューヨークタイムズにも紹介され、日本語にも翻訳されて「1日5分かけるだけで本格パンが焼ける!」というタイトルで発売されているからご存知の方も多いだろう。
最初にこの本をみた時、無計画なわたしはタイトルに途端に惹かれてしまった。
というのも、ジム・レイヒーさんの捏ねないパンに挑戦したことがある人ならお分かりだろうが、ジムさんのレシピは計画をしっかり立ててから作る必要がある。
少ないイーストとたっぷりの水分でゆっくり発酵させるので発酵時間が長く、一次発酵に12〜18時間かかってしまうため、発酵時間や焼き始める時間を逆算して仕込まなくてはならない。しかも発酵時間はその日の温度や湿度によって左右されるので、夜中にむくっと起き上がってパンを焼くハメに陥らないよう数時間の余裕をもってパン焼き計画を立てないといけないのだ。
それが楽しいと言えば楽しいのだが、頻繁に家で焼くようになってからは「思い立った時にパッと焼けたら良いのになー」と考えるようになる。
そんな時に出会ったのがジェフ・ハーツバーグさんとゾーイ・フランソワさんのこのレシピ。
多めのイーストを使って一度にたっぷりパン種を仕込み、2時間かけてしっかり一次発酵させてから冷蔵庫に移し、低温で保存しながらもイーストにゆっくり活動させる。
一晩寝かせさえすれば、あとは焼きたい時に焼きたい分だけ取り出せばいい。二次発酵はオーブンとストウブ鍋を温めている間に完了するので綿密なパン焼き計画を立てる必要もない。
最初の仕込みにかかる手間も5分なら、パンを焼く日の手間も5分。
つまり、人間がかける手間は1日5分で、あとはイーストや冷蔵庫やオーブンに任せておけば自宅で本格的なアルチザンブレッドが焼けるという寸法だ。
しかも、最初に仕込んだパン種は冷蔵庫で2週間保存できるというから嬉しいではないか!
ということで、「ストウブで捏ねないパンを作ろう! Part 3」ではこのレシピに挑戦し、2週間かけて4つのパンを焼いてみよう!
と、張り切ったのは良いが、いざパン種を仕込もうと買ってあったドライイーストを取り出してみたところ、なんと賞味期限が切れているではないか……。
賞味期限切れのドライイースト
しかも、1年半も前に切れている。
ドライイーストも生きものだ。未開封とは言え、中の皆さんは活躍する機会も与えられないまま既に現役引退していらっしゃるかもしれない。
パン種を仕込む前にそれを確認する必要があるので、急遽「ぬるま湯テスト」をすることにした。
まずぬるま湯に砂糖を少々加え、そこにドライイーストを小さじ1杯ほど入れてかき混ぜる。
そのまま待つこと約5分。すると……

まだご活躍中だった!
このままさらに5分放置すると、ぬるま湯の中のイーストはさらにぶくぶくと膨れ上がって容器から溢れ出てしまった。
これだけお元気なら大丈夫。安心してパンを仕込むことができる。
1日目:パン種を仕込んで一次発酵
イーストがまだまだ現役なことを確認できたので、パンだねを仕込もう。
必要な材料は以下の通り。
材料(約450gのパン4つ分)
・中力粉(強力粉と薄力粉を半半に混ぜても、強力粉だけでもOK) 910g
・水(37℃くらいのぬるま湯) 680cc
・塩 大さじ1〜1半(17〜25g)
・ドライイースト 大さじ1(10g)

まず5〜6リットルくらい入る大きなボールか蓋付きの容器にぬるま湯、塩、ドライイーストを入れてざっとかき混ぜる。
ドライイーストが溶けなくても気にする必要はない。
ざっとかき混ぜたらそこに粉を全てどさっと加え、スプーンや箸などでよく混ぜる。
今回は中力粉と薄力粉が手に入らなかったので、強力粉を使った。
ここで捏ねる必要はなく、粉っぽいところがなくなるように全体によく混ぜあわせればそれで良い。
少しベタつく生地のはずで、これを一つのボールにまとめる。

まとまったら容器の上にかるくラップをする。ここまでの所要時間約5分。
あとは室温で2時間放置するだけだ。
放置している間にパン種はどんどん膨らんで2〜3倍になる。



ちなみにこの日は気温19℃、湿度70%。おそらくパンの発酵にはちょうど良い条件のはず。

2時間経過して一次発酵が完了したら、容器は密封せずに軽くラップか蓋をかぶせてパン種が呼吸できるようにしておき、そのまま冷蔵庫に入れて一晩寝かせる。
ちなみにこのパン種は2時間の一次発酵が完了したら整形して二次発酵させ、焼いても良いのだが、冷蔵庫で一晩以上寝かせた方が味が良くなる。
2日目:1つ目のパン焼き
一晩寝かせたパン生地を冷蔵庫から取り出すと、表面がぺたんこになっている。

寒くて縮こまってしまった感じだ。
今回はこのうち約4分の1を切り取り、残りはまた冷蔵庫に戻して次回まで保存しておく。
切り取ったパン生地を打ち粉をしたまな板の上に置き、手で四方に引っ張ってビヨーンと伸ばす。

引っ張って伸ばしたら、それを封筒の封を折るようなつもりで中央に向かって折る。

四箇所同様に、ビヨーンと引っ張っては折る。

降り終わったら粉をつけた手にパン生地を持って、角張ってしまったコーナーを折り込むようにして丸く形を整える。
それを粉をたっぷり振った整形カゴや布巾、あるいはクッキングペーパーの上に置いて約40分間二次発酵させる。

今回はパンにティータオルの布目をつけたかったので、焼いた時に上になる面を下にしてティータオルの上で二次発酵。
二次発酵させている間にパン生地が乾かないよう上からティータオルの端をかぶせてそのまま放置する。その間にオーブンを230℃に予熱してストウブ鍋と蓋を20〜30分空焼きして熱しておく。(今回使ったのは16cmのSTUBラウンドココット)
40分後、二次発酵が終わった状態がこちら。

二次発酵と言っても大して膨らんでいないが、このパンは焼いている間に膨らむのであまり気にすることはない。
布目がきれいに出ているかな?とティータオルをひっくり返してみると、この通り!

焼いて膨らんだ時にきれいに割れ目が入るよう、ナイフで十字に切り目を入れる。

これを20〜30分空焼きしておいた熱々のストウブ鍋に入れて蓋をし、オーブンに戻す。
いつもはパン種を直接STUB鍋に入れるのだが、今回はクッキングペーパーごとストウブ鍋に入れた。
蓋をしたまま230℃で30分焼いて一旦取り出し、蓋をとって中身をチェック。

きれいに膨らんで十文字に入れた切れ目もくっきり割れている。
蓋を外したままオーブンに戻し、綺麗な焼き色になるまでさらに5〜10分焼いて完成だ。

狙いよりも少し焦げてしまったが、上出来だ。
中はこんな感じ。

ちょっとみっちり気味なのは、やはり賞味期限切れのイーストのせいかもしれない。
今回は全て強力粉にしたせいか底のクラストが少々厚めだが、その分中がもっちりしていて美味しい。
5日目:2つ目のパン焼き
パン種を仕込んでから5日目。2個目のパンを焼くことにした。
前回1個目を焼いたあとに残ったパン種は、冷蔵庫のスペースを考慮して小さめの容器に移し変えて保存しておいたのだが、パン種を冷蔵庫から取り出してみると、容器の8分目くらいだった生地が容器いっぱいに膨らんでいた。

切り取ろうと引っ張ってみると、この状態。

まだまだイーストさんたちはバリバリご活躍中だったらしい。
このうち3分の1を切り取り、前回と同様に二次発酵させて焼く。



焼き上がったパンを切ってみると、こんな状態。

食べてみると、最初のパンよりもなんだか美味しい。
ひょっとしたら、冷蔵庫で保存している間に発酵が良い具合に進んでさらに美味しくなったのかもしれない。
11日目:3つ目のパン焼き
3つ目のパンを焼こうと冷蔵庫からパン種を取り出してみると、少し表面が乾いていた。
でも気にせず続行。残っているパン種の半分を使ってこれまで同様に二次発酵させ、焼く。
焼き上がったパンを切ってみると中はこんな感じだ。

1つ目、2つ目とあまり変わらず、味も2つ目とほぼ同じで美味しい。
乾燥していた部分は膨らみが悪いが、それさえ目をつぶれば上出来だ。
16日目:4つ目のパン焼き
本当は14日目に最後の1個を焼くはずが、うっかり忘れてしまって気づいた時にはパン種を仕込んでから16日目になっていた。
レシピに記載されている保存可能期間から2日超過しているので、ドキドキしながら冷蔵庫のパン種を取り出してみると、3つ目の時よりもさらに表面が乾いている。
「ひょっとしたら膨らまないかも」
一瞬そう思ったものの、今回も気にせずそのまま続行。二次発酵させて焼いてしまう。
焼き上がったパンを切ってみるとこんな感じ。

3個目と変わらず、乾燥していた部分だけ他より穴が少ないが、味もほとんど落ちずに美味しく食べられた。
1日5分の手間をかけるだけのパン焼き
16日かけてジェフ・ハーツバーグさんとゾーイ・フランソワさんの「1日5分」のレシピでパンを4つ焼いてみたが、このレシピは気が向いた時に自宅で気軽にパンを焼きたいわたしにはかなり向いているようだ。
うちの冷蔵庫のサイズや、保存している間のパン種の乾燥を考えると、多分、レシピを半量にして2つ分ずつ仕込むのが我が家にはぴったりかもしれない。
なんせ一次発酵前の準備は5分だし、混ぜてしまえば2時間放置して冷蔵庫に入れればよいだけだし、2つ分なら冷蔵庫の場所もさほどとらずに保存できる。ここまでしておけば、好きな時にいつでもパンが焼ける。
あとはわたしがドライイーストの賞味期限に気をつければ良いだけなのだ。
Information
ジェフ・ハーツバーグさんとゾーイ・フランソワさんの
Artisan Bread in Five Minutes オフィシャルWebサイト
・The New Artisan Bread in Five Minutes a Day: The Discovery That Revolutionizes Home Baking
・1日5分かけるだけで本格パンが焼ける!
1日5分の手間で焼けるアルチザンブレッド

ストウブ鍋で焼いた捏ねないパン
作ったパン種の4分の1をSTAUBのラウンドココット16cmを使って焼くと、鍋いっぱいに膨らんで丸いボール型のパンになります。18cmや20cmのラウンドココットを使うと、平たくなりますが綺麗にカンパーニュ風に焼けるはずです。
Recipe Credit: Jeff Hertzberg & Zoë François
食材
- 中力粉 910g
- 水(37℃くらいのぬるま湯) 680cc
- 塩 大さじ1〜1半(17〜25g)
- ドライイースト 大さじ1(10g)
手順
- 大きな容器に人肌に温めた水と塩、ドライイースト を入れてよくかき混ぜる。
- そこに中力粉を全て入れ、粉っぽさがなくなって一つにまとまるまでスプーンやヘラなどで混ぜる。捏ねる必要はない。この時点でかなりベタつく生地。
- 容器に蓋かラップをかぶせる。きっちり閉めずに少し隙間をあけておく。この状態で室温で約2時間放置する。
- 2時間放置している間に2〜3倍に膨れるので、軽く蓋をしたまま冷蔵庫に入れる。冷蔵庫の中でもゆっくり発酵を続けるので、最初の2、3日は蓋をきっちり閉めない。この状態で14日間保存できる。
- パンを焼く時はパン種を好きな量だけ切り取り、打ち粉をした台の上に置いて四方を手で引っ張って伸ばし、4つのコーナーを中央に重ねるように折り曲げる。重なった部分が下になるようにして丸く整形する。それを粉を敷いたクッキングペーパーの上に置くか、たっぷり粉を降ったパン発酵カゴか布巾の上に置き、乾かないように上から軽く布巾をかけて40分休ませ、二次発酵させる。この間にあまり膨らまないが心配する必要はない。
- オーブンを230℃に余熱し、ストウブ鍋を蓋ごと20〜30分焼いて温める。
- 二次発酵の40分が経過したら、パンの上になる方に鋭いナイフで切れ目を入れ、熱したストウブの中に入れて蓋をし、オーブンに戻して約20〜30分焼く。(クッキングペーパーで二次発酵させた場合はクッキングペーパーごとストウブの中に入れる。)
- 20〜30分経ったらいったん取り出して蓋を外し、よく膨らんで薄ら焼き色がついていたら蓋を外したままオーブンに戻す。10分ほどさらに焼き、綺麗な焼き色がついたら焼き上がり。
- 焼き上がったらすぐに鍋からパンを取り出し、網の上などで冷ます。
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