カバーが縫えたので、お次はボタンタフティングだ。
ボタンタフティング という言葉には馴染みがなかったが、タフティングと言うのは外生地と中綿を房飾りで留めつけることらしい。
外生地と中綿を糸で留めると聞いてパッと頭に浮かんだのが、寺で坊主が座るふっくらした立派な座布団。
あの座布団の真ん中と4つの角っこにも立派な房飾りがついている。
そういえば子どもの頃、あの房飾りを指の間に絡めて肌触りを楽しんだり、ぐいっと引っ張ってむしったりするのが大好きで、こっぴどく怒られたことがあったが、まさかあの糸が外生地と中綿を留めておくためについていたとはちっとも知らなかった。
おそらく、ボタンタフティングというのはわたしのような悪戯小僧が糸をむしらないように、糸の房の代わりにボタンを使って留めつけたものなのだろう(勝手な想像)。でもこの悪戯小僧はどうせボタンをむしり取ってこっぴどく怒られただろうが。
そんなことを思いながらインターネットで検索すると、ボタンタフティングのチュートリアル動画がたくさん見つかった。
どうやら、包みボタン用のキットとタフティング用の長い針、丈夫な糸さえ揃えれば簡単にできそうだ。
包みボタン
ありがたいことに、世の中には包みボタン用のキットというものがあり、それを使えば簡単に包みボタンが作れるようになっている。
昔のように丸く切った布の縁をチクチクと縫って、ボタンを巾着包みにして作らなくても良いのだ。
しかも最近は100均ショップでもキットが売られていて、今回はダイソーで27mmサイズのを入手。12個分のボタンパーツと道具がついていて100円だなんて、なんとお買い得なのだろう!


作り方は簡単だ。
布を付属の型紙通りに丸くカットし、シリコンの型の上に乗せて丸みのあるボタンパーツを乗っけ、周りの布を内側に折り曲げた上に脚付のパーツを乗っけ、緑色のプラスチック器具でぐっと押すだけ。
そうすると、脚付きのパーツの外縁がぺこんと凹んで布が金属パーツの間にはさまり、しっかりと固定されるのだ。

そのはずなのだが、どうもうまくいかない。
どんなに押しても金属のパーツがポンと弾き飛ばされる。
そもそも、シリコンの型に布が綺麗におさまってくれない。どうやらリバコの布が分厚過ぎて、ボタンパーツが入る隙間が残っていないようだ。
試しに薄手の木綿でやってみたら、とても簡単に綺麗な包みボタンが作れた。

でもソファベッドにつけたいのは試しに作ってみた木綿で包まれたボタンではなく、リバコの分厚い生地で包まれたボタン。さて困った。
もちろん、プロが使う包みボタンプレス機なら分厚い布も扱えるのだろうが、このためだけに何万円もするプレス機を買うつもりはない。
どうやら昔ながらの巾着包みで作るしかないらしい。
せっかく100円ショップで買ってきたキットを無駄にするのもなんなので、まずキットを使って薄手の木綿でくるんだ包みボタンを作り、それをさらにリバコの生地で包むことにした。
要するに包みボタンのリバコ生地包みで、裏側は美しく仕上がらないが、どうせ裏は見えないのだからどうってことはない。



ぺこんと押してはチクチク縫うを繰り返して予定外に時間と手間がかかったものの、なんとか背もたれクッションに必要な包みボタン16個が完成した。
お次はこれをクッションに縫い付ける番である。
タフティング針
そこで必要になるのがタフティング用の針。
厚みのあるクッションにグサっと突き刺して反対側まで貫通させるための針なので、クッションの厚みよりも長いものが必要だ。
調べてみると「タフティング針」という商品はなかったものの、「ぬいぐるみ針」というものがあり(巷のぬいぐるみたちは全て鍼治療を受けているのかも?)、これで事足りそうだ。
ぬいぐるみ針にはサイズが色々あったので、探した中で一番長いCloverのぬいぐるみ針 No.10というのを取り寄せた。
長さ25cm、太さ2.4mm。必殺仕事人が仕事道具として使ってそうな少々怖い針で、わたしがぬいぐるみならこの針を見たらスタコラさっさと逃げるだろう。

あとは糸さえあれば良いが、それは家にあるタコ糸で間に合わせることにして、いよいよお待ちかねのボタンタフティングに取り掛かる。
ボタンタフティング
ボタンタフティングにはいろんなやり方があるようだが、どうやらこのチュートリアル動画のように、クッションに糸を通してその両側をボタンで留めるやり方が最適に見えるので、これでやることにした。
まずはボタンをつけたい場所にマチ針で印をつける。ボタンはクッションの両側につけるので、目印も両側につける。

印をつけ終わったらボタンに糸を通し、糸の端を揃えて両端を針の穴に通す。(どうやら糸は太いナイロンのテグスを使う方が良いようだが、気にせず家にあったタコ糸で代用。)

それを印をつけたクッションにグサりと刺し、反対側の印から出す。


ところがこれがなかなか難しい。
なんせ中のウレタンは厚みがある上にしっかりしているので、中で針の方向転換ができないのだ。
無理矢理方向を変えようとすると太い針がこんなふうにひん曲がってしまう。

何度もぶすぶすと刺し直し、ようやく反対側の印近くから針を出せた。
それを8箇所分、ぶすぶすとやる。

反対側に糸を出したら、2本の糸のうち1本にボタンを通し、もう一本の糸の周りで結んでしまう。

そして結んだ方の糸を離さないように片手でしっかり持ちつつ、もう一本の糸をぐいっぐいっと引っ張るのだ。
するとあーら不思議、糸を引っ張れば引っ張るほどボタンがクッションの中に沈んでいく。
ボタンが好みの深さまで沈んだら、2本の糸をボタンの周りで数回結び、余分な糸を切ればボタンタフティングの完成だ。

背もたれクッションが出来上がったので、お次はマットレスにかかろう。
ボーエ・モーエンセンのデイベッドのマットレスには14箇所ボタンがついていたので、必要な包みボタンは28個。
「あー、今から28個もペコン&チクチクをしなくてはいけないのかー」と少し気が遠くなりかけていた時、相棒から「待った」の声がかかった。
マットレスにはボタンをつけないで欲しいと言うのだ。
相棒曰く、背もたれクッションのボタンはさほど気にならないが、マットレスにボタンがついていると座ったり寝転がったりした時に気になるらしい。
「マットレスにボタンがなければボーエ・モーエンセン化にならない!」
なんて頭の固いことは言わず、「それもそうだな」とあっさり同意。
カウチポテトしながら映画を見るのが好きなわたしたちなので、マットレスにボタンがついていたら、ボタンの窪みにはポテチのかけらが溜まって掃除も面倒に違いない。
というわけで、マットレスのタフティングは急遽省略することになった。
突然完成終了した計画
心の準備も整っていないままに、突然「無印良品ソファベッドのボーエ・モーエンセン化計画」は完成終了の日を迎えることになった。
と言うよりも、気がついたら実は既に完了していたというオチだ。
余った包みボタンキットをどうするかはまた後で考えることにして、知らない間に完成していたソファベッドをしばし鑑賞する。

どうだろう?
我が家の無印良品のソファベッドはボーエ・モーエンセンっぽくなっただろうか?
Information
無印良品ソファベッドのボーエ・モーエンセン化計画のために買ったもの
・生地:リバコNC-125(マットレス用)4.1m、リバコNC-127(背もたれクッション用)2.5m
・ミシン糸:シャッペスパン#30 163と198各1巻
・ジッパー:マットレス用2m1本、背もたれクッション用1m2本
・包みボタンキット:27mm12個入り2パック(*16個使用)
・ぬいぐるみ針:Clover No.10 1本
合計約24,800円
「円柱型クッション」につづく